9条連ニュース/112号 巻頭言

平和への苦闘ドイツでも
中山 弘正
 
統一後の「市場移行」、ユーロ通貨圏の実情などの調査で、しばらくドイツ北部にいた。

壁が崩れた後、何度かドイツは訪ねたが、ベルリンには1988年以来初めてだった。400万人と今や名実ともに首都。ブランデンブルク門のところに立つとやはり感激を新たにする。朝鮮のこの日を想う。

しかし、東西格差は本当に依然として大きい。ドイツ全体の失業率が11.1%(2月)だが、西8.9%(295万)、東19.4%(170万)で、東は州により 20%も越える。外国人排斥、反ユダヤ主義の強まりは周知のところだ。

ベルリンで最近できたユダヤ博物館に行った。超モダンビルで多面的展示だが、逮捕前の日常生活用品の展示などがかえって深い悲しみを誘う。ハンブルクでも、ちょうど「国防軍の犯罪」という展覧会を訪ねた。一度、余りに右寄りの展示があったのでそれを批判して、ナチス党のSSだけが反ユダヤ人暴力をふるったのではなく、国防軍もやっていたと指弾する実証的なものであった。日本でいえば、「新しい歴史教科書」派への批判運動、であろう。「SSが悪、国防軍は中立」と信じてきた多くのドイツ人にとり、この展示会は衝撃が大きく、すでに沢山の都市で開催された。

ところで、ハンブルクから30分ほどの友人の町リューネブルクでも、昨年すぐ近所の中堅の建築会社が一つつぶれ、600人失業したという。巨大なクレーンも、カラフルな会社のビルも、空しく寂しい。そして、郊外の建築資材市場にはあらゆる資材が置いてあって東方から来て、新コロニイ(新住宅地区)に住む人々は、協力し、自力で建てる。車でも日本車の攻勢が激しいし、ドイツ経済は大変だ。失業者を減らす公約のシュレーダー首相も、SPD(社民党)も人気はがた落ちだ。「それでも、たとえ戦術でも、イラク派兵をしなかったのは立派だったよ」と私は友人を励ます。

とはいえ、輝かしいドイツ精神史にも、かげりを感じなくはない。賀川豊彦の研究で、明治学院大にも留学し、ドイツで博士号をとったR・Sさんの夫君が、せっかく牧師の資格をもったのに在住のハンブルクで働く場がないという。そのうち判ったのは、市内の 144教会の3分の1は近々閉鎖、3000人の聖職者の30%は、6年以内に辞めねばならぬ状況とのことである。新人を雇うどころではない。ルターの宗教改革時代からの領邦教会制度(地域行政と一体化した教会制度で全住民から 10分の1税をとってきた)が根底から揺らいでいる。離婚率も最近は高まっているし、ドイツ国内のイスラム教徒(主にトルコ人)も今や300万人といわれる。

ドイツの平和への闘いは、しかし、こうした外的・内的危機の中で続けられているのだ。

(なかやま ひろまさ 明治学院大学教授)

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