9条連ニュース/113号 巻頭言

高遠菜穂子さんへのバッシングに思う
白血病の治療に訪れたイラク人親子と(ヨルダンにて)
細井 明美
 
4月21日アンマンから帰国して、私は日本中に吹いているイラクでの人質に対するバッシングの嵐に驚いてしまった。アルジャジーラTVから見ていた高遠菜穂子さんは日を追うごとにこちらが辛くなるような画像に変わっていったが、それでも日本で見る画像はアルジャジーラの比ではない。それはまさに悪意をもって彼女の姿を写していた。

解放第一声が「タバコが吸いたい」であったとか。次に映った映像はひたすら何かを食べている姿。日本のマスコミはそれを繰り返し放映した。切り取られた印象ほど恐いものはない。人はそこに「したたかな女」を見た。

民衆は不満のはけ口を求めているのだろう。政府がマスコミを使い巧妙に仕組んだストレス発散劇の対象に彼女は据えられた。憎悪の手紙、電話、いやがらせ、ありとあらゆるものが彼女を襲った。もし、3人が全員男性だとしたら、これほどのバッシングをしただろうか?市民運動側が問題にしている「自己責任」の問題とは違うおぞましさがここにはあると思う。「普通」の女性たちが彼女を批判する根底にあるもの―日本の多くの人が抱える「ジェンダー」―を政府側の男たちが利用したと言ったら言い過ぎだろうか?

もし、男性が「タバコを吸いたい」と言ったらどうだろう?解放された男性がひたすら食べていたらどうだろう?それを見る女性たちの感情はまったく違うと思う。

問われるべきは国民の安全を守らなければならない国家のあり方であるのに、私たちはこんなにも簡単にすりかえられてしまった。

映像の持つ恐さを本当に感じる。マスコミによる「刷り込み」の恐さもつくづく感じる。TVに映る高遠さんの姿は私自身だと何度思っただろう。

「私は悪いことをしたの?」と毎日自問自答している彼女が本当に気の毒でならない。彼女はいつだって今だってちっとも悪くはないのだ。ありのままに生きることの出来ない日本社会の息苦しさを結局私たち自身で作っている。その根の深さを今回改めて知った。

それにしてもアンマンでの日本政府の記者会見はまったくそっけなかった。情報源がアルジャジーラしかなかったのだから仕方ないかも知れないが…。

(ほそい あけみ イラク子ども健康基金共同代表)

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