9条連ニュース/162号 巻頭言
名古屋高裁判決(4.17)の歴史的画期性!
中央大学名誉教授・9条連代表伊藤成彦
自衛隊のイラクへの派遣は、憲法第9条に違反する行為であり、憲法が保障する平和的生存権が侵害されたと、市民 3000人以上が国家賠償法によって、それぞれ10000円の損害賠償を請求し、同時に自衛隊のイラク作戦の違憲の確認を求めていました。 この「イラク派兵差止め訴訟」に対する控訴審の判決が、4月17日に名古屋高等裁判所で下されました。 * 判決文は、 (1)「自衛隊のイラク派遣の違憲性について」 (2)「平和的生存権について」 (3)「控訴人らの請求について」の3部からなります。 (1)で判決は、自衛隊が活動する地域は「イラク特措法にいう〈戦闘地域〉に該当する」と指摘し、「イラク特措法を合憲とした場合であっても、武力行使を禁止したイラク特措法と、活動地域を非戦闘地域に限定した同法の条項に違反し、かつ憲法9条1項に違反する活動を含んでいると認められる」と、明快に断定しました。 (2)では、「平和的生存権は憲法上の法的な権利として認められるべきだ」「平和的生存権には具体的権利性がある」と明確に述べた上で、「〈平和〉が抽象的概念であることなどを根拠に、平和的生存権の権利性や、具体的権利性の可能性を否定する見解があるが、憲法上の概念はおよそ抽象的なもので、否定されなければならない理由はない」と、平和的生存権の具体的権利性を力強く擁護しました。 以上の2点だけでも、この判決は歴史的に画期的な判決です。 自衛隊のイラク作戦は違憲! なぜなら、第1に、「イラク特措法を合憲とした場合であっても」自衛隊の行為はそれにも違反していることを綿密に論証して、政府・自衛隊の無法行為を厳しく批判し、しかもその行為が「憲法9条1項に違反する」違憲行為であると、明快に指摘したからです。自衛隊の行為に違憲判決を下したのは、1973年の長沼ナイキ基地訴訟の福島判決以来、実に35年振りです。 平和的生存権は認められる! 第2は、「平和的生存権には具体的権利性がある」と、高裁段階でこれほど明確に認定したのは、日本の裁判史上初めてです。 これまでのイラク訴訟ではほとんどの判決が、憲法前文の平和的生存権が「法的効果や法的拘束力を生ずるものと解することはできない」と、その法的効果を否定して来ました。 名古屋高裁判決は、そのような従来の歪んだ憲法解釈を真っ向から糺(ただ)し、正しい解釈を示しました。 しかも第3に、判決は、形式的には政府側が勝訴した形であるために、政府は最高裁に控訴できず、5月2日にこの判決が最終的判決として確定しました。
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