9条連ニュース/114号 リレートークNO.2

空洞化する帝国
常石 敬一

僕は韓国語や中国語は読めない。それでも韓国・朝鮮・中国などが日本をどう見ているか、近隣諸国が世界をどう捉えているかを知りたくて、インターネットで、「朝鮮日報」(韓国)※1 、「朝鮮新報」(朝鮮)※2、それに「人民日報」(中国)※3のそれぞれ日本語版を見ている。これ以外に「チャイナポスト」(台湾 )※4があるが、これは英語なのでめったに行かない。これらを読んでいて時々僕自身の理解不足などで分かりにくいところはあっても、それぞれの対日観や世界観を知る上で重宝している。

六月九日、「朝鮮日報」に「教室から『気をつけ、礼』号令がなくなる」という記事を見つけた。記事によれば「来月からソウル市内の小中高校の教室で…号令に合わせた挨拶がなくなる。ソウル市教育監は『授業の度にクラス長の号令に合わせ、教師と生徒が挨拶をする文化は日本植民地時代の残骸』 とし…教師と生徒間の『おはようございます』…のような自然な挨拶を交わ す」ことにしたという。翌一〇日の「朝日」はこの措置は「教師から『社会が大きく変化しているのに、植民地時代以来のあいさつは旧態依然。先生と生徒が人格を尊重し合うため、古い慣習と決別すべきだ』との声が強まった」ためと報じた。ここには教育、教師、愛国心などの問題があるだろうが、それは措いて、ここでは韓国における「日帝の負の遺産」の清算のひとつと捉えるにとどめる。

「読売」は六月九日、「超党派で教育基本法改正大綱案、愛国心など盛り込む」という記事を掲載、さらに翌一〇日、「出生率が過去最低の一・二九、年金改革法"誤算"」、さらに「朝日」にも一〇日、「出生率低下一・二九、年金改革の前提揺らぐ」という見出しが躍った。

「愛国心」を強制して、戦争のできる国、日帝を再構築したくとも、その目論見は足元から崩れている。超少子化による人口減、という帝国の空洞化が進んでいるのだ。人口減により「読売」「朝日」の見出しが指摘するように、年金制度の破綻がより一層加速するだろう。さらに多くの人々が自分の未来は「自己責任」で自力で守らなければならないと考え、国や社会、地域のことを考えるゆとりを一段と失うだろう。

人それぞれで、家庭を持ちたい人もそうでない人もいる。家庭を持っても子育てをしたい人も、それを避けたい人もいる。それは昔からそうだろうし、それは良いとか悪いという問題ではない。それを踏まえた上で思うのだが、出生率が史上最低となったということは、自分の、あるいは自分たちの未来に確信が持てない人が増えている、ということではあるまいか。そんな中で、国会議員という、権力を持ち、今の社会の甘い汁を吸っているような人々に「愛国心」と言われても白けるだけだろう。一人ひとりが別の存在だということを前提にして、より暮らし易い社会のあり方を考えていきたい。

(つねいし けいいち 神奈川大学教授)

※1 http://japanese.chosun.com/(「朝鮮日報」韓国)
※2 http://210.145.168.243/sinboj/Default.htm(「朝鮮新報」朝鮮)
※3 http://j.peopledaily.com.cn/home.html(「人民日報」中国)
※4 http://www.chinapost.com.tw/(「チャイナポスト」台湾)

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