1923年9月1日11時58分32秒、死者・行方不明者は推定10万5000人といわれる関東大震災が発生した。亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。
その大地震発生から100年が経過した現在、私たちの眼前には首都直下型地震、南海トラフ地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震など、命と生活を脅かす自然災害の危機が迫っている。だからこそ、私たちは過去の出来事で終わらせず、事実を見極めなくてはならない。とりわけ、関東大震災直後に起きた朝鮮人、中国人、さらに共産主義者や地方出身者が虐殺された事実から、目を逸らせてはいけない。
大地震によって、関東地方は壊滅的な被害を受け、民心・社会秩序が混乱に陥った。こうした状況下、内務省は戒厳令を宣告、各地の警察署に治安維持に尽くすことを指示した。そのなかには、混乱に乗じ「朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだ」等の根拠のない言動も含まれ、社会不安を一気に煽る結果となった。そしてこのことが行政機関や新聞、人々の噂で広まり、多くの朝鮮人らが官憲や、竹槍や日本刀、銃などで武装した民間人で構成された「自警団」らの手によって人たちに殺害された。香川県から来ていた被差別部落の薬行商人らが、朝鮮人と誤認され、自警団や村民らによって子供や妊婦も虐殺された福田村(現野田市)事件、沖縄、秋田、三重出身者らが犠牲となった検見川事件、秋田出身者が犠牲となった妻沼事件などがそれである。
この教訓は、虐殺に加わり流言飛語に惑わされ、朝鮮人等無辜の人々の命を奪う行動に走った人々の多くのは、今の私たちと何ら変わらない〝普通の人々〟であったことだ。この厳然たる事実は、大きな社会不安や極度なストレスの渦中におかれると、私たち自身が犠牲者に、あるいは加害者になるかもしれないということを教えている。それは東日本大震災が発生した当時も、不逞外国人が強盗を行っている等の流言飛語が飛び交うという同じ現象が起きていたことでも明らかだ。こうした事実は不安定な社会状況下で発生する人間心理の必然の現れ方なのかもしれない。
いま泥沼化するウクライナ戦争から世界各地で軍事緊張が高まり、日本国内でも「抑止力」の名を借りた軍事増強が大手を振って進められている。ヘイトスピーチなどにもみられるように、異常なナショナリズムが醸成されることも現実だ。
しかし、私たちは時代の空気に染まらず、流されない。だから私たちは過去の負の歴史から目を背けず、悲劇を繰り返さないために思考停止に陥らず、一人一人が現在(いま)に立ち向かっていかなければならない。
憲法9条―世界へ未来へ連絡会